Reviews of KYOTOGRAPHIE 2023 (1) General Council

 (高木由利子/PARALLEL WORLD)

(This article is in Japanese only.)

◉総評 - General Council

KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)はサテライトイベントのKG+やKG+SELECTを含め、写真作品を創作しようとするアーティスト、写真家としてはイベント含めて勉強になることばかりで文句のつけようがない。日本でこれ以上の素晴らしいフォトフェスティバルはなく、唯一無二だ。


(パオロ・ウッズ&アルノー・ロベール/HAPPY PILLS)

しかし今回は例年のように、世界的に名のしれた超大物(ギイ・ブルダンやロバート・メイプルソープ、アルバート・ワトソン、アーヴィング・ペンといったレベル)の大型展示がなく、キービジュアルも全体的に落ち着いたトーン、悪く言えば暗くてさみしい印象ばかりで、正直、鑑賞する前から足が重く感じられた。もちろん、実際に行ってみるとそうした印象を覆されることはままあるのだが。


ジョアナ・シュマリ/アビジャン

一人の純粋な鑑賞者としては、昨年と比べて非常にパワーダウンした印象が否めない。何より、せっかく新型コロナ禍が明けつつあるにも関わらず、観る人々を勇気づけるようなポジティブなメッセージが弱く、最終的には音楽祭にまで拡大しようとした主催者側の思惑が悪い方に転んだ、という印象がある。

特に、今年は例年になくメインで日本人作家を多く取り上げていたが、到底KYOTOGRAPHIEのメインプログラムのクオリティには到達していないと思われるものも幾つかあったように感じられて、思わず目の前が真っ暗になった。

昨年もケリングのスポンサードで日本人女性写真家10人をひとつの展示で取り上げていたが、はっきりいって去年の方が全体的なクオリティは高かった。だからこそ、昨年ご覧になっていない方には「残念」としか言いようがないし、今年初めて観たという方は果たして来年また観たいと思えたかどうか…? 別に私はKYOTOGRAPHIEの関係者でもなんでもないが、非常に気がかりだ。

とはいえ、全体を通して鑑賞者、特に日本人の写真のIQやEQを大きくアップさせる内容であったことは間違いなく、今後も疑いようがない。日本人、特にプロのフォトグラファーの多くはまったく気づいてもいないだろうが…。

世界的にも稀有な写真祭だからこそ、初日から外国人のお客様(おそらくアート関係者)がたくさん殺到する。積み重ねの過去10年があり、11年目の今回があり、来年も特に何事もなければ粛々と12回目が行われるだろうし、それを期待する。


(ココ・カピタン/Ookini)

私は過去、2017年、2019年とたいした問題意識もなく、気軽に気の向くままに鑑賞していたが、その経験が実は自分を成長させていたとようやく気づいたのは昨年、2022年のことだった。 

個人的に、鑑賞される方には毎年しっかりと時間をかけて(←ここ重要)鑑賞されるのをおすすめする。作品を理解するには一定レベルのアートの読解力と言語化能力が必要で、それも「審美眼」の重要な一部であろう。


(デニス・モリス/Colored Black)

(マベル・ポブレット/WHERE OCEANS MEET)

アートの審美眼を鍛えるには相当な時間と労力が必要であり、私もまだその過程にある。しかしながら、こうしたインプットやアウトプットがおそらく地味ながらもアーティストとしての体幹を鍛える重要なトレーニングと確信している。

最後に補足しておくが、ここで写真掲載して取り上げた作品は、すべて私が「良い」と評価し、文句のつけようがないものばかりである、ということを固くお断りしておく。 

(世界報道写真展・レジリエンス〜変化を呼び覚ます女性たちの物語)